2017.09.28 Writer:

#001 M’sコラム 木造住宅の耐震性能について考える
テーマ「木造住宅も構造計算が必要です」

建築十書

「強がなければ用は果たせない、強と用がなければ美は形だけのもの、そして、美がなければ建築とは言えない」
*「強」とは構造安全性、「用」は使いやすさ、「美」はデザイン性

古代ローマ時代の城郭設計者Vitruviusが「建築十書」で述べた建築の三大要素「強・用・美」です。
建築の基本は強・用・美の融合です。まずは「強」構造の安全性があり、そして「用」使いやすさを考えた間取り、そして「美」デザインも重要であると。
現在の建築はここに加えて、省エネ性などの「快適性」、維持管理・劣化を考えた「耐久性」も重要です。

このように建築にとって構造安全性は最も重要であることが理解できると思うのですが、木造住宅にとっては構造安全性が最も疎かにされているように感じます。

構造計算とは?

木造住宅を設計するとき、住宅に作用する荷重(かじゅう)に対して「安全であること」、「快適であること」を「計算」で確認します。これが構造計算です。

荷重とは何か?
木造住宅に作用する荷重とは、下の方向(鉛直方向)の荷重として、固定荷重、積載荷重、積雪荷重があります。
横方向(水平方向)の荷重として、地震力、風圧力があります。
固定荷重は木造住宅自身の重さ(自重)で、積載荷重は人や家具の重さ、積雪荷重は屋根に積る雪の重さです。
安全であることとは、地震や台風で木造住宅が倒壊しないかを確認します。
快適であることとは、床の梁が小さすぎて歩くと床がたわんだり揺れたりしないことを確認したり、地震や台風で木造住宅が倒壊まではしなくても揺れないことを確認します。

構造計算は計算の内容や方法を理解するには専門知識が必要にはなりますが、まずは、構造計算を行わずに木造住宅を設計し建てることができないことは理解できると思います。
しかし、このとても大切な構造計算が木造住宅で階数が2階建てや平屋建ての場合に行われていないことが多いのです。

理由はふたつ。
ひとつは制度の勘違いです。木造三階建ての場合は建築士だけではなく確認申請時に構造計算書を提出して第三者のチェックを受けます。しかし、木造二階建てや平屋建ての場合、小規模なため確認申請時に構造計算書などの安全性確認図書の提出義務が免除されています(四号特例)。これは建築士の責任のみに任せられていることを意味しています。ところが多くの建築士は、安全性確認図書の提出義務がない→計算不要と勘違いしています。
もひとつは建築士の意識の問題です。木造住宅は経験と勘で出来上がるものと本気で考えています。構造計算しなくても経験と勘で安全で快適になると・・。
経験と勘で木造住宅は安全にはなりません。快適にもなりません。

こんな状況ですから、各地で発生する大地震のたびに木造住宅の倒壊被害は減りません。
木造住宅の構造安全性を本気で考えていきましょう。

Writer

佐藤 実(さとう みのる)
株式会社M’s(エムズ)構造設計 代表取締役社長/「構造塾」塾長
学生時代から構造を志し、社会人で鉄骨造や鉄筋コンクリート造の構造計算を勉強する。阪神淡路大震災が起こり、構造計算をしていない木造住宅が軒並み倒壊している現場を目の当たりにし、「このような惨劇が二度と起きないよう日本中の木造住宅を地震で倒壊させない!木造住宅の構造計算をしよう」と決意。
現在は住宅をつくる側から、構造設計する側へ完全移行するため「㈱M’s構造設計」を設立し、構造安全性に対する知識を持ち、構造計算できる技術者が増えることでもっと安全な木造住宅がたくさん増えると考え「構造塾」を設立。現在、会員数は約1000名。
ダイエットのランニングがきっかけでマラソン大会、トライアスロンに挑む塾長兼スポーツマン。